学生時代に能楽にのめり込みました。
烏丸今出川を少し上がったところの河村能楽堂で、
今は亡き河村晴夫先生のもとで稽古をしました。
まるで決闘が展開されているような張り詰めた空間と悠久の時間の流れが交わる。
きらびやかな衣装をまとったシテが過去の挫折の中から深い執念とともによみがえり、
雄叫びのような掛け声をかけながら囃し立てる囃子の音楽と、
追い立てるような地謡の声楽にあわせて、舞を舞う。
室町の貴族の雅と戦国武将の武によって育まれたすごい芸術だと思いました。
大好きな鴎外の全集の一巻に「能について」という目次を発見したときには、
胸躍らせながら頁を急いでめくりました。
ところが、たったの一行しかないのです。
「能は極端まで様式化したる人間の行為である。」
さすが軍人であり、科学者でもある文豪の評価だなあ、と感心しました。
簡潔で正確無比な表現ですね。
※ブックカバーチャレンジ:フェイスブックで始まったリレーチャレンジ。「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」